あなたの身近な人、若しくはあなた自身が、「どうしても片づけられない」という状況に陥ったことはありませんか?

もしかすると、それはあなたがだらしないからではなく、「生れつき片付けが苦手」なだけかもしれません。

この記事では、ADHDなどの発達障害が片付けに与える影響や、その対処法やアドバイスまで網羅的に書いてあるため、興味のある方はぜひ最後までご一読ください。

この記事を監修してくれた専門家

遺品整理士:目黒 大智

一般社団法人遺品整理士認定協会
認定遺品整理士(第 IS26076 号)

片付け業や不用品回収業者を経営し、現場経験だけでなく、リサイクル・貿易業務に従事。年間1000件以上の不用品回収や遺品整理案件に携わる。

 

本当にだらしないから?片づけられない原因を分析!

一口に片づけられないといっても様々な原因が考えられるため、まずは片づけられない原因について一つ一つ見ていきましょう。

主に、片付けが苦手な人は、以下の4つの原因があると考えられます。

原因①:性格上の問題

最も多いと思われるのが、性格上の問題です。

いわゆる「だらしない」と言われる方々は、片付けに対してネガティブな印象を持っていることが多いため、どうしても片付けを先延ばししてしまう傾向にあります。

片付け後のスッキリした部屋を想像したり、好きな音楽を聴きながら掃除してみると効果的です。

原因②:家具への過度な感情移入

「長年使っている家具に愛着がわいてきて、どうしても捨てられない」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

その場合は無理に捨てるのではなく、気持ちの整理をして、捨てられるものから捨てていきましょう。

その際は写真に収めるなどすれば、思い出を残すことができるため、おすすめです。

原因③:うつ病などの精神疾患

うつ病を始めとする精神疾患も考えられます。

仕事のストレスなどでうつ病になってしまうと、行動する気力が失われてしまうため、部屋を片付けるのも困難になります。

精神疾患の場合、病院で処方してもらった薬を服用することで一気に良くなることもあるので、一度病院の先生に相談してみましょう。

原因④:ADHDなどの発達障害

この記事で主に紹介するのが、ADHDを始めとする発達障害などの原因です。

後に詳しく説明しますが、ADHDの場合は注意力が散漫になってしまうため、片付けをしていてもすぐに別のことに注意が逸れてしまいます。

発達障害には根本的な治療法がないため、自分の特性として受け止めてどう付き合っていくかが重要となります。

発達障害ってなに?主に3つの種類あり

それでは発達障害について詳しく見ていきましょう。

発達障害には主に以下の3つの種類があり、「片付け」に大きく影響する発達障害としてはADHDが挙げられます。

種類①:自閉症スペクトラム障害(ASD)

自閉症スペクトラム症候群は、約100人に1人の割合で現れます。

症状としては、相手の気持ちを理解するのが苦手であったり、行動・興味に偏りがあると言われています。

種類②:注意欠如・多動性障害(ADHD)

子どもの約20人に1人、大人では約40人に1人の割合で現れます。

男女差はあるものの、主に注意力が散漫となったり、多動性などの症状がみられます。

一般的に、発達障害の中で片付けられない大きな原因となるのが、このADHDです。

種類③:学習障害(LD)

人口の2-10%が学習障害であると言われています。

知的能力としての異常はありませんが、「読み」「書き」「計算」など特定の動作の異常として症状が現れます。

ADHDの人が片づけられない理由4点とは?

発達障害の中でも「ADHDが特に片付けに影響を与える」と分かったところで、ADHDが具体的になぜ片付けに影響するのかを解説していきます。

後のアドバイスはこれらの特性を踏まえたものとなっているため、ぜひご覧ください。

理由①:不注意

ADHDでは日本語で「注意欠如・多動性障害」と言われる通り、注意力が欠如してしまいます。

具体的に片付けに当てはめると、「一度モノを使った後、片づける前に注意が別のモノに向いてしまうため、しばしば片づけるのを忘れてしまう」などの状況が考えられます。

「使ったモノを元の場所に戻す」ことが片付けの基本であることを考えると、ADHDだと片付けがかなり大変だと分かりますね。

理由②:先延ばし傾向

また、大人のADHDに最もよく見れれるのが、「先延ばし傾向」です。

これは「回避行動」の一種で、片付けすること自体を先延ばしにしてしまうことで、部屋がどんどん散らかってしまいます。

ADHDでなくとも言えることですが、実は片付けができない人は「先延ばし」する傾向があるといえます。

理由③:実行機能の低さ

ADHDの場合、「計画を立てて実行する」という機能が低下してしまいます。

そのため、いざ片づける時に、広い部屋を前にして「何から始めたらいいんだ…」と呆然としてしまうことがあります。

通常、「何をどこに片づけるのか」把握した上で片付けを進めるため、ADHDではかなり片付けのハードルが上がってしまいます。

理由④:衝動性による過集中

衝動性の過集中とは、簡単に言うと「集中力のコントロールができない」ということです。

集中すべきところに集中できず、集中しなくてよいことに没頭してしまうため、なかなか片付けだけに集中できません。

なので、「片付けをしていたはずなのに気付いたら読書に1時間も没頭していた」などという事態が起きてしまいます。

周囲の人の誤解

上記のようなADHDの特性は生まれつきのモノなので、本人は何一つ悪くありません。

しかし、「片付けができない人」はしばしば「だらしない人」と捉えられてしまいがちですよね。

それがストレスになってうつ病を併発してしまう方々も多くいらっしゃいます。

周囲の方々は、「どうしても片づけられない」という友人や家族が身近にいる時は、あまり本人に対してストレスになるようなことは言わないようにしましょう。

ご家族や周囲にADHDの方がいる方々向けに、後ろのページで「ADHDの方の家族ができる対策6ポイント」をまとめておりますので、よろしければご覧ください。

ADHDの方への片付けアドバイス7点!

ADHDの方はどうしても片付けが苦手になってしまう背景を解説しました。

これからはそれらを踏まえたうえで、ADHDの方々が片付けを進めていく上でのアドバイスを7つまとめました。

いきなり全てを実践するのは難しいでしょうが、どのアドバイスもかなり役立つものばかりなので、一つでも心に留めておくことをお勧めします!

アドバイス①:片付けができない自分を責めない

まず大事なのは、自分を責めないことです。

ADHDは生まれつきなので、そのせいで片付けが苦手になるのは仕方のないことなのです。

なので自分を責める必要はないですし、自分を責めても逆にうつ病になる方も多くいらっしゃるため、困ったことがあれば身近な家族や友人、必要なら病院の先生に相談しましょう。

アドバイス②:困ったときは周囲の家族に頼る

片付けで行き詰ったときは周囲の家族に頼るようにしましょう。

家族に手伝ってもらいながら、「今日は何をどこに片づける日!」など一緒に決めることで、実行機能の問題もカバーすることができます。

一番いけないのは一人で抱え込んでしまうことなので、積極的に周囲の人に頼るようにしましょう。

アドバイス③:片付け場所を限定

片付けの際の実践的なアドバイスの一つとして、「片付け場所を限定する」があります。

ADHDだと「何から片づけたらいいのか分からない」と慌ててしまいがちですが、「今日は玄関」「明日はクローゼット」など片付けの限定することによって、その日することを明確にすることができます。

また、「部屋を全体的に掃除するぞ」と曖昧な意識だと、「ある場所を片付けているとまた別の場所が気になって、、」となってしまい片付けにうまく集中できません。

片付けを効率的にするためにも、「片付け場所を限定する」は重要スキルなのでぜひ使ってみてください。

アドバイス④:先延ばしBOXを作る

次のアドバイスとしては「先延ばしBOX」を作りましょう。

モノを捨てるか捨てないか決めるのは意外と大変ですよね。

「悩んでいる間に注意が逸れてしまって片付けができない」という状況を防ぐのに有効なのがこの「先延ばしBOX」です。

捨てるか悩ましいモノはすぐに「先延ばしBOX」に入れてしまい、また別の機会に家族と一緒に捨てるかどうか相談しましょう!

「先延ばしBOX」を活用することで、片付けがより効率的になりますね。

アドバイス⑤:片付けのルールを作る

生活する際に、「片付けルール」を決めておきましょう。

「片付けルール」を設定して習慣化することで、意識せずとも部屋をきれいに保つことができます。

ここで注意する点としては、ルールをたくさん設定しすぎてしまうと、習慣化することが難しいくなるため、単純なルールを2,3個だけ設定しましょう。

おすすめルールとしては
・使わないものを出しっぱなしにしない
・床にモノを置かない
です。

各ご家庭の状況に合わせて、簡単なルールを決めておくといいでしょう。

アドバイス⑥:持ちモノを減らす

もし可能なら、自分の持ちモノを減らしましょう。

部屋にたくさんのモノがあると、一気にたくさんの視覚情報が脳に入ってくるため、「何から片づけたらいいか分からない」となってしまいます。

特に
・壊れている・色褪せているモノ
・1年間使っていないモノ
は捨ててもいい場合が多いので、参考にしてみてください。

アドバイス⑦:置き場所を決め、印や絵で分かりやすく!

あらかじめ家具ごとの置き場を定めておき、そこに分かりやすい印や絵のシールなどをつけておきましょう!

それにより、印のついた場所に指定されたモノがない場合に、気付いて片づけるきっかけを作ることができます。

一人で印をつけることが大変な場合は、家族とも協力して場所を決めていきましょう。

ADHDの方の家族ができる対策6ポイント!

ここまで読んでくださった方はわかると思いますが、ADHDの方が片付けをする際は、家族の方の協力があると非常にスムーズになります。

改めて家族の方ができる対策を6つまとめておりますので、ぜひご一読ください。

対策①:無断で片付けない

1つ目の対策としては、「無断で片付けない」ことです。

ADHDの方に無断で片付けてしまうと、使ったモノをどこに直せばよいかわからず、放置してしまいやすくなります。

つまり、あくまで対症療法であり根本的な解決にならないのです。

なので家族の方が部屋を片付ける際には、ADHDの方と「〇〇に〇〇を置こうね」と一緒に確認しながら片づけるようにしましょう。

先ほど述べた通り、その際に印や絵なども付けておくとより効果的です。

対策②:叱るのではなくそっとする

片付いていない部屋を見て叱らないようにしましょう。

わざとやっている訳ではありませんし、生まれつきである以上、叱ったところで何の解決にもなりませんよね。

叱られることがストレスとなりうつ病になって、余計に片づけられなくなることも考えられますので、叱るよりもそっとしておきましょう。

そして可能なら、「手伝うから一緒に片づけない?」など背中を押してあげましょう。

対策③:出し入れの動作を簡単にできる配置へ

家具を、出し入れの動作をしやすい配置にしましょう。

ADHDの方が出したモノを片付ける際、片付け動作が複雑な場合、片付けを先送りにしてしまう可能性が高いです。

それを防ぐためにも、出し入れの動作がシンプルで済むような配置を心がけましょう。

対策④:何が入っているか一目でわかる配置へ

何が入っているか一目でわかるような配置にするのもおすすめです。

何が入っているのかすぐに判別できれば、片づける際にどこに置けばいいのか判断しやすくなります。

ぜひ参考にしてみてください。

対策⑤:なるべく褒めて片付けを習慣化

片付けがうまくいっていたときはなるべく褒めるようにしてください。

ヒトは褒められるとうれしい生き物ですので、褒めることで片付けを習慣化しやすくなります。

ただ、ADHDの方が大人である場合など、あからさまに褒めると気分を害してしまう可能性があるので、さりげなく「今日も部屋をきれいにしてくれてありがとうね」など伝えるようにしましょう。

対策⑥:頼られたらなるべく協力しましょう!

最後に紹介するのは、「頼られたらなるべく協力しましょう!」ということです。

頼ってくるということは、ADHDの方も部屋を片付けたいという意思があるということです。

大きなチャンスなので、一緒に協力しながら「モノの置き場を決める」「先延ばしBOXの相談をする」など、一気に片付けを進めていきましょう!

まとめ

この記事では主に発達障害(ADHD)の方が片付けられない理由とアドバイス、さらに家族の方ができる対策などをまとめてきました。

ADHDだと片付けるのは大変だとは思いますが、周囲の方々とも協力して、ぜひ住みやすい部屋を手に入れてくださいね♪