親族が亡くなったら誰かがやらなければならない「遺品整理」ですが、最近では業者に依頼する方も少なくはありません。

ただ、業者に依頼するのは簡単でも、実は「トラブル」も多く発生しているのが現状です。

また、家族間での遺品整理にまつわるトラブルも少なくはありません。

そこで今回は、遺品整理のトラブルについてご紹介したいと思います。

今後、遺品整理は業者に依頼したい方も、遺品整理で家族間ともめたくない方も、ぜひ参考にしてください。

この記事を監修してくれた専門家

遺品整理士:目黒 大智

一般社団法人遺品整理士認定協会
認定遺品整理士(第 IS26076 号)

片付け業や不用品回収業者を経営し、現場経験だけでなく、リサイクル・貿易業務に従事。年間1000件以上の不用品回収や遺品整理案件に携わる。

遺品整理とは?

そもそも遺品整理とはなんでしょうか。

遺品整理とは、「故人が残した全ての家財や品物を残すものと処分するものに分けること」を指します。

貴重品・貴金属、家電・家具、生活雑貨、骨董品、美術品など、整理するものは多岐にわたります。

また、自力では整理が行えない場合、遺品整理業者に依頼することができます。

依頼者の代わりに遺品を形見分け、リサイクル品、廃棄のように分類し、片付けを素早く行うために遺品整理業者を選ぶケースが増えています。

最近では、故人の連絡先やSNS、ネットショップの購入履歴などのデジタル遺品を整理する専門業者も存在します。

 

遺品整理でトラブルが起こる理由

遺品整理でトラブルが起きる原因として、「親族間」と「業者間」があります。

親族とのトラブル

親族間で起きるトラブルとして、財産の分配による遺産相続の問題が多いです。

分配比率は法律で定められていますが、事前の準備を怠っていたことにより相続する時になってトラブルが発生します。

また、遺産分割は遺言書が優先されるので、分配額に親族が納得いかず裁判になだれ込むケースもあります。

他にも、分割が難しい不動産の問題や故人の面倒を見ていた・見ていなかったことによる寄付分の問題などがあります。

遺品整理は故人に思いをはせる瞬間であるはずが、人間のドロドロとした感情が行き交う場面へと変わってしまうのです。

遺品整理業者とのトラブル

近年需要が高まっている遺品整理業者の約5〜6%が悪徳業者と言われています。

高額請求をする、無許可で営業をする、遺品を盗むなど被害は後を絶ちません。

悪徳業者は依頼者が無知であることを利用して勝手にオプションを付けたり買取額を安くしたりします。

また、遺品整理業者を依頼するのは旦那さんに先立たれた高齢の奥さんが多く、立場が弱いことを利用して悪質な行為をするケースもあります。

中には恫喝まがいなことをして相手をねじ伏せるところも存在します。

「これ以上怒らせてはいけない」「せっかくやってくれたから」と恐怖して料金を払い、泣き寝入りしてしまうのです。

 

遺品整理にまつわるトラブル事例

遺品整理にまつわるトラブルを業者に依頼した場合と、家族間とで分けて紹介していきます。

遺品整理業者によるトラブル事例

遺品整理を業者に依頼した場合に起こったトラブルの事例です。

・高額追加請求

【事例3】作業時に予定外の料金を請求され、見積金額の2倍以上に。
出典:https://www.j-cast.com/kaisha/2018/07/27334622.html?p=all

業者に依頼した場合、最初に見積もりを取ることができます。ですが、特に何の問題もなく追加されるようなことは行われていないのに、見積もりよりもかなり高額な金額を請求されてしまうというトラブル。

・貴重品の窃盗

遺品整理で貴重品を次々と無断回収。何をどれくらい持って行ったのかも不明。
出典:https://www.sankei.com/affairs/news/141011/afr1410110038-n1.html

遺品整理の際に出てきた貴重品を盗む業者もいます。貴金属など貴重品がどこから出てくるか分からないため、遺族が立ち会っていてもこっそり盗まれるトラブルがあります。また立会いが必要のない場合も信頼できない業者の場合、貴重品が盗まれてしまう可能性があるのです。

・勝手に貴重品を処分

父親の遺品整理をリサイクル業者に依頼。業者は仏像や花瓶など高価なものを女性に無許可で次々に持ち去った。何をどれだけ持っていったのかもわからない。
出典:https://www.sankei.com/affairs/news/141011/afr1410110038-n1.html

遺族の方や亡くなられたご本人にとっては大切な貴重品だったのに、確認もせずに処分してしまうトラブルもあります。特に立会いがない場合に多く見られるトラブルでもあります。

・不法投棄

「遺品整理」を名目に不用品回収を行った便利屋。元の持ち主にも撤去費用が請求されるケースも…。
出典:https://www.excite.co.jp/news/article/TokyoSports_847843/

遺品整理の処分品は全て自治体が定めた施設へと持ち込まなければなりません。その際に必要な資格を取得していない業者は、山の中などに不法投棄してしまいます。不法投棄は犯罪なので依頼主も巻き込まれてしまうトラブルもあるのです。

不法投棄は当然犯罪でもあり見つかれば罰則を受けることになります。また業者だけではなく、不法投棄をする違法な業者へと依頼した自分たちも罰則を受ける可能性があるのです。

「何も知りませんでした」では通らないことだって十分に考えられます。

トラブルのうちの一つである不法投棄は、しっかりと事前に資格を保有しているか、必ず行われないかなどを業者にきちんと確認してから遺品整理を依頼しましょう。

・低価格での不当買取

家族が価値を知らないのをいいことに、これらを処分するための費用を請求しておきながら、実際は売り飛ばすこともある。
出典:https://president.jp/articles/-/27038

遺品の価値は当然所有していた本人にしか分からない場合があります。遺族にとってはガラクタのように見えて意外と価値が高い可能性があるのです。その遺品を遺族が価値を理解できていないことをいいことに、低価格で買取を行うトラブルもあります。低価格で買い取った遺品を高額で転売する業者もいます。

・雑な作業による破損等

処分しないように指示したのに作業員が誤って運び出した。作業も遺品を乱暴に扱うなど雑であった。
出典:https://www.excite.co.jp/news/article/Jcast_kaisha_334622/?p=4

業者によっては作業が雑で遺品の破損トラブルなども起きています。作業をしてみないと分からない部分もありますが、破損の際に保証もない場合もあり、大きなトラブルとしても問題視されています。

・無許可で営業

遺品整理で出た処分品を無許可で違法に回収した疑い
出典:https://www.youtube.com/watch?v=Dl8kPL9Esaw

一般家庭のゴミを回収・処分をするには自治体から「一般廃棄物収集運搬業」の許可証が必要です。近年、無許可でゴミや不用品の回収を行う業者が増えてきており、実際に逮捕者も現れています。

・暴言を吐く

依頼者が納得せず難色を示したりすると、暴言を吐いたり怒りだしたりするひどい業者もいます。
出典:https://president.jp/articles/-/20114?page=2

依頼者ではなく自分たちの都合で行動し、従わないといきなり態度を急変させて暴言を吐く業者が存在します。これ以上反発すると何をされるかわからないため、契約をしてしまうという方が増えています。

・キャンセル料の発生

相見積もりをとることを話していたにもかかわらず、実際にお断りの連絡を入れたら、キャンセル料金が発生すると伝えられたとのことでした。
出典:https://relife-site.jp/ihinseirigyousya-trouble/

作業の当日や前日ではなく、数日前や1ヶ月前にキャンセルしても料金がかかるトラブルがあります。相見積もりを取ってから改めて決めたい旨の連絡をしても、強引に押し切られてしまい契約させキャンセル料金を狙う業者もいるので注意しましょう。

遺品整理による家族とのトラブル事例

遺品整理にまつわるトラブルは業者だけではなく家族間でもよくあることです。家族間でのトラブル事例も合わせて確認しましょう。

・義両親の遺品整理

夫には未婚の姉がいるのですが、多分処分をすると言ったら間違いなく怒られそうな気がします・・・・
出典:https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1150364551?__ysp=576p5Lih6KaqIOmBuuWTgSDjg4jjg6njg5bjg6s%3D

義両親が亡くなった際、義両親のどちらかが生きていれば親族がしなくてはならないという状況にはならないでしょう。ですが入院や認知症、もしくはすでに一方が亡くなられている場合には、親族の誰かが行わなければなりません。

そんなときに親族の誰が遺品整理を行うのか、そしてその費用はどうするのか、形見分けはどう配分すれば良いのかなど、様々な問題が浮上してしまいます。

また、義両親に兄弟がいた場合なども、上記の件でもめる可能性があり、実際に義両親の息子や娘の配偶者ともどう進めていくかなどでもめています。

他にも遺品整理の際にかかったお金を誰が支払うのかなどでも、トラブルになるケースが多いです。

・夫や妻の遺品整理

事実婚同然の婚約者が他界。その後義両親は一切関わるなと言って…。
出典:https://www.bengo4.com/c_3/c_1150/b_165940/

夫や妻が亡くなった際の遺品整理は当然配偶者が行うものと認識されていますが、義両親が居ればトラブルになる可能性があります。

「荷物を全てよこせ」などと言われたり「遺骨をよこせ」とまで言われてしまう方もいます。

また義両親に何の相談もせずに行ったため、義両親が貰うべき形見などが配分されないという場合もあります。

・両親や親族の遺品整理

遺品整理をしたら財産泥棒と親族に疑われてしまった…。
出典:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190825-00010000-tvtplus-life&p=2

実の両親の遺品整理では、父もしくは母のどちらかが生きていれば任せることができますが、亡くなっていたりできない状態であれば子供に任せられます。

その際に、兄弟間で形見分けや遺品整理にかかったお金の支払いなどでもめるトラブルも多いとのこと。

遺品には価値があるものもたくさんあるので、そういった金品関係でもトラブルが起きています。

トラブルが起きた際の解決方法とは

遺品整理でトラブルが起きた場合の対処法について、業者と家族間の両方をご紹介します。

遺品整理業者によるトラブル解決方法

まずは業者によるトラブルの解決方法からチェックしていきましょう。

・消費者センターへ相談

トラブルが起きたら真っ先に弁護士に相談に行く方もいますが、まずは最初に業者が遺品整理士の資格を保有しているかどうか確認してください。

遺品整理士の資格を保有しているのなら、遺品整理士認定協会へ相談しましょう。

また保有していない場合は、国民生活センターや消費者センターなどへ相談してください。

何があったかをしっかりと相談することで、自分に降りかかったトラブルを解決させることができるでしょう。

・弁護士や行政書士に相談

遺品整理士認定協会や消費者センターなどへ相談しても、解決の糸口が見つからないトラブルもあるでしょう。

そのような場合には、費用が発生してしまいますが弁護士や行政書士に相談しましょう。

法的な手続きやトラブルに関してはプロなので、そういった相談ができる弁護士事務所や行政書士事務所を探し、相談してくださいね。

 

家族や親族とのトラブル解決方法

家族や親族とのトラブルの際の解決方法です。

・弁護士と相談

家族や親族でのトラブルは弁護士に相談するのが一番良い方法となります。

本当は家族や親族で話し合いをすることが重要ですが、解決できないと感じたら思い切って弁護士に相談するのが良いです。

ただ、弁護士に依頼するとお金がかかるので諦めてしまう方もいるかもしれませんが、依頼費用より高くつくトラブルも多いので、自分では抱えきれないと感じたらプロの方にお願いするということも一つの手段です。

失敗しない遺品整理業者の選び方

ここからは遺品整理を業者に依頼した時に、失敗しないための選び方についてご紹介していきます。

業者を選ぶ際に重視しておきたいポイント

まず失敗しないためには選ぶポイントを押さえていくことが重要です。

・訪問見積もりを行なっているか

遺品整理を業者に依頼するとまず最初に見積もりを取りますが、実際に遺品整理を行う場所に来てもらう「訪問見積もり」をおこなってくれる業者を探しましょう。

訪問見積もりが行われないと、遺品整理後に追加で高額請求される可能性がありますので注意してください。

・遺品整理に関する資格を取得しているか

遺品整理を行う際に業者が保有しておくべき資格や免許があります。

遺品整理を行うにあたっては遺品整理士の資格を、そして不法投棄されない心配がない一般廃棄収集運搬業などの資格を保有しているかは特に注意して確認しましょう。

遺品整理士の資格を保有していると、トラブルが起きた際に遺品整理士認定協会へと相談しやすくなります。

また一般廃棄収集運搬業の資格を保有していれば、不法投棄される心配もある程度軽減されるでしょう。

・会社概要等が書類やホームページに明記されているか

基本的にどんな会社でも明記することが必要な会社概要ですが、この会社概要が明記されていない業者は怪しい可能性が高くなります。

やましいことをしていなければ堂々と会社の詳しい内容を明記することができますよね。

書類またはホームページなどに、会社名(法人名)・会社の所在地・電話番号・代表者名・設立年月日・事業内容・従業員数・許可・登録・免許などが記載されているかチェックしてください。

最低でも「会社名・会社の所在地・電話番号・代表者名」がきちんと記載されているかを確認し、所在地などがおかしくはないかも調べておきましょう。

・各種損害保険等に加入してるか

遺品整理には物損や怪我などが起きる可能性があり、信頼できる業者は「損害賠償保険」に加入しています。

基本的に保険があるからやりたい放題ではなく、保険があるからこそしっかりと対応してくれるのです。

逆に保険に加入していなければ、やりたい放題されてしまう可能性もありますし、立ち会っていなければ隠蔽される可能性もあるでしょう。

誠実で真摯な対応をするためにも必要な保険なので、できるだけ加入している業者を選びましょう。

・請求書が見積もり金額と同じか

遺品整理が終わってからでないとわからない部分もありますが、イレギュラーがない限り基本的に請求書は最初に撮った見積もり金額と同じになります。

まずは最初の見積もりの際に、必ず「イレギュラーがない限りこの金額で良いですね?」と念を押して確認してください。

・イレギュラー対応時には必ず相談

遺品整理の際にイレギュラーはどうしても発生してしまうものです。その場合、きちんと依頼主に相談し再度見積もりを取ってから行われるかを見積もりの際に必ず確認しておきましょう。

イレギュラーでもないのに勝手に対応して、高額な請求書を提出してくる業者も少なくはありません。

イレギュラー発生時の相談と、再見積もりの確認を忘れないようにしてください。

・丁寧に対応しているか

対応が丁寧であるかも業者の質を見極めるポイントとなります。電話での問い合わせた対面での見積もり時なども含め、対応が丁寧であるかどうかはやはり重要です。

最初の対応でその後の作業も丁寧かどうかが判断できるでしょう。どのように最初に接してくれるのかも重視しておいてください。

 

相見積もりも忘れずに

遺品整理業者を決める際に、1件だけに依頼してしまってはいけません。またその1件で確定させてしまってもいけません。

まずは見積もりを取ってもらってから「検討します」という旨を問い合わせ時に伝えておくと良いでしょう。

また、他の業者からも同じように見積もりを取る「相見積もり」で、業者同士の金額やサービスなどを比較してから検討しましょう。

1件だけをすぐに決めてしまうと失敗やトラブルにつながる可能性が高くなります。

必ず「相見積もり」を取ること、そして最低でも3件以上の相見積もりを取れるようにして、重視したいポイントをクリアしているかなどを確認してから決めるようにしてください。

 

業者だけが悪いのではない!

遺品整理の業者選びで失敗してしまう原因は、業者の選び方に原因があります。

確かに厳選して選んだ業者であれば、「悪いことをするなんて思わなかった」と信頼を裏切られたように感じる場合もあるでしょう。

ただし、様々な条件をクリアしていたとしても、金額が破格の安さであれば遺品整理のやり方もその金額に見合ったやり方でしかしてもらうことはできません。

安かろう悪かろうではありませんが、それでも影響がないとは言い切れないのです。

業者に任せるのであれば、それなりにお金はかかるものということは理解しておくべきでしょう。

また、誠実な対応を求めるのであれば、比較的見積もり金額が高くなっても仕方がないと考えてください。

安いにはそれなりに理由もありますし、「安い」ことで文句も言いにくいですよね。

もちろん悪質な業者が悪いのですが、その業者を選んでしまった自分にも多少なりとも非があることは否定できません。

良い業者を選びたいと考えるのならば、金額だけに惑わされないように注意しておきましょう。

まとめ

遺品整理には様々なトラブルがあり、今回ご紹介した事例だけではなくもっとひどいトラブルも起きている可能性があります。

遺品整理は単なる片付けではないですし、故人の大切なものを扱うという責任もあります。

だからこそ、納得のできる嫌な思い出とならないような遺品整理を行わなければなりません。

そのためには、信頼できる業者選びはとても重要なのです。

また、家族間での揉め事も故人は望んではいないはず。

どちらもしっかりとクリアできるように、記事を参考にして嫌な思い出が残らないよう、きちんと遺品整理をしてくださいね。