ゴミ屋敷の問題と引きこもりの問題。

どちらも近年深刻な社会問題となっており、さまざまな場所で議論が交わされています。

しかし、ゴミ屋敷の問題と引きこもりの問題は実は密接につながっていることをご存知ですか?

そこで今回は、ゴミ屋敷と引きこもりの問題について考えてみたいと思います。

2つの問題の解決法についても解説しましたので、ぜひ最後までご覧下さい。

この記事を監修してくれた専門家

遺品整理士:菅野 武史

一般社団法人遺品整理士認定協会
認定遺品整理士(第 IS23822 号)

片付け業者にて3年、遺品整理業者で2年の現場経験を積んだ後、自身の会社を設立。年間500件以上の現場をこなし、現在も積極的に片付けや不用品回収案件に携わる。

 

どうして引きこもりの人はゴミ屋敷を作り出してしまうの?

ここでは、引きこもりの人の家がゴミ屋敷となってしまう原因について考えてみましょう。

人と会いたくないのでゴミ捨てにも行けない

なぜ引きこもりの人がゴミ屋敷を作り出してしまうのか分かりますか?

引きこもりの人は極度に人と顔を合わせることを嫌うため、ゴミ捨てに行けない人が多いのです。

これは、人と接点を持ちたくない、あるいは人に会いたくない、家族と顔を合わせるのも嫌だと感じているため、必然的に行動範囲も狭くなり、ゴミ捨てにも行かなくなるからです。

例えば、同じマンションに居住している人と面識がない分、顔を合わせるのも億劫だと感じているかもしれません。

人と会うくらいなら掃除をしなければ良いという選択肢になってしまうようです。

このように、引きこもりの人は基本的に人と顔を合わせることを避ける傾向にあるため、必然的に家の中のゴミを捨てずに溜め混んでしまう傾向にあると言えるでしょう。

掃除が面倒くさいから

どうして引きこもりの人はゴミ屋敷を作り出してしまうのか、そもそもの原因は掃除を面倒に感じているため、自分で片付けようという意欲が欠けていることが考えられます。

これは、単に掃除が面倒くさい、あるいは楽しみを感じないことに労力を使うことを嫌っている可能性があります。

例えば、ゴミを処分したところで自分にとって何も得することがないと感じるため、無気力である可能性もあります。

あるいは、分別処理をするという行為を面倒だと感じることで、ゴミを片付けたり処分することを避ける傾向にあります。

このように、引きこもりの人ほど無力な方が多く、かつ掃除を面倒だと感じているため、一向に片付けが進まず、結果的にゴミ屋敷化が進んでしまうと言えるでしょう。

散らかっている部屋にいると落ち着くから

なぜ引きこもりの人ほど自身の家をゴミ屋敷化させてしまうのかご存知ですか?

それは、散らかっている部屋にいると落ち着くからという理由が挙げられます。

これは、見渡す限り物で溢れ返っている部屋は、引きこもりの人にとってとても落ち着く場として感じているためです。

例えば、物が何もない部屋だと、自分の声も響いてしまい、必要以上の空間があるために落ち着かない日々を送ることになります。

通常は片付けが行き届いたきれいな部屋で過ごすのが当たり前ですが、引きこもりの人はそうはいきません。

このように、引きこもりの人ほど散らかっている部屋にいることを最も落ち着く場所だと認識しているため、ゴミ屋敷化するスピードは想像以上に早くなると言えるでしょう。

今まで親が掃除をしていたが亡くなってしまったから

なぜ引きこもりの人がゴミ屋敷を作り出してしまうかの理由を考えてみると、大半がこれまで親が家の掃除をしてくれていましたが、その親が亡くなってしまい、部屋の片付けをしてくれる人がいなくなったことが大きな理由として挙げられます。

これは、生前、家の片付けはすべて親が担当していたからだということが分かります。

例えば、ゴミ捨てはもちろん、部屋の中に散らかった洋服や物を元の位置に戻す、あるいは掃除や洗濯はすべて親が面倒を見てくれていたのでしょう。

その親が亡くなると、なおさら自分では何もできない状態であることが分かります。

このように、今まで親が掃除をしてくれていたものが、親が亡くなることで残されたあなたがゴミを捨てずにいれば、当然家がゴミ屋敷化してしまうと言えるでしょう。

お金がなく物を捨てるのがもったいないから

引きこもりの人ほど定職につかずお金がないため、一度手に入れたものを捨てるのはもったいないと感じています。

その結果、よりゴミ屋敷を作ってしまいます。

これは、引きこもりで家から出ることがない生活をしている分、定額の収入を得ることができず、新しい物を購入するお金もないからです。

例えば、明らかにゴミだというものでも、何かに使うことができると感じた場合は捨てずに取っておくでしょう。

さらに、人から見てゴミにしか見えないという物でも引きこもりの人にとっては大切な物として溜め込んでしまう傾向にあります。

このように、引きこもりの人は人と接することを敬遠するため定職がなく、安定した収入を得ることができない分、物を捨てずにとっておこうとすることがゴミ屋敷化を一気に加速させていると言えるでしょう。

 

ゴミ屋敷に住む引きこもりのキーワード「セルフネグレクト」とは

ここでは「セルフネグレクト」について解説していきます。

生活を維持する能力を失い、自己の健康と安全を損なう状態

ゴミ屋敷に住む引きこもりの人は、「セルフネグレクト」という状態に陥っていることが多く、健全な生活を維持することができない状態になっています。

これは、人間として生活する上での必要となる能力や、生きるための意欲をなくし、自身の健康や安全を損なうなど自虐的行為が見られるためです。

例えば、普通の生活とも言える食事や入浴もせず、排泄をしない、さらには体調不良に陥っても医療機関を受診しないなど、自虐的行為は続きます。

また、健康的な生活を維持しようとする意欲がないため、この悪循環が繰り返されてしまうのです。

このように、ゴミ屋敷に住む引きこもりの人は、生活を維持する能力を失い、健康と安全を損なう状態となっていると言えるでしょう。

体調が悪くて外に出られないことも

ゴミ屋敷に住む引きこもりの人は、自身で気付かないうちに「セルフネグレクト」という自分自身のことを放棄した危険な生活を送っていると言えます。

これは、自分に対して何も興味が湧かず、物事をポジティブに考えることができなくなっているためです。

例えば、健康的な食事を摂取することなく、栄養バランスの悪い食生活を送っているために体調が悪くなり、外出することさえできなくなってしまうことが考えられます。

それでも医療機関を受診する意志がないため、家に引きこもったまま体力が回復するのをじっと待つ傾向にあります。

このように、自虐的行為が頻発して起こる割に自身がセルフネグレクトであることに気付かないこともあります。

そのため、自虐的行為に及ぶ人こそ、困った時に手助けしてもらえるよう、気付いてもらえるよう、本来多くの人と交流を持つべきだと言えるでしょう。

家族や友人との繋がりがなく孤独

ゴミ屋敷に住む引きこもりの人は、自身が「セルフネグレクト」を行ってしまっているだけではなく、家族や友人との繋がりもないため孤独であると言えます。

これは、自分自身に興味を持てず、すべて投げやりになり、人とコミュニケーションすら取らなくなってしまったからです。

例えば、引きこもりの人がセルフネグレクトの状態であれば、当然、外出も行いません。

まして、家族からも冷たくされる、あるいは心置ける友人がいないなど、常に孤独を感じているでしょう。

このように、ゴミ屋敷に住む引きこもりの人は自身に対して自虐的行為であるセルフネグレクトを行い、自分をコントロールすることさえできず、孤独に陥ってしまっていることが分かります。

引きこもりが原因でゴミ屋敷になってしまった実際の事例

以前「セルフ・ネグレクト」に陥って、ゴミ屋敷になってしまった60代女性について紹介します。

長年、認知症だった父親の介護をしていた女性は、忙しい日々でだんだん周囲との交流がなくなりました。

その後、父親を亡くしそのショックに加え、自分も糖尿病が原因で視力が低下。

週2回のゴミ出しがあり、行きはゴミ出しの所定場所に行けたが、帰りは目が見えなくなり、自宅が分からなくなった事が原因で外出を控えるようになりました。

次第に生活環境が乱れ、家がゴミ屋敷になってしまったそうです。

周囲への遠慮から助けを求める事も、できなかったと女性は言っていたそうです。

深刻化する引きこもりの問題

ここでは、引きこもり問題について掘り下げてみたいと思います。

人に相談できない日本社会の構造が関係している

深刻化する引きこもりの問題に、人に相談できない日本社会の構造が関係していると言えます。

これは、引きこもりが若年層に留まらず40代や50代の中高年の方々に増加しているため、それを支える親世代がさらに高齢化していることが理由として挙げられます。

また、引きこもりにより社会と接点のない生活を送っているため、引きこもりに対するあなたが持つ悩みを誰に相談すべきかが分からないからです。

そして、そのままの状態で過ごすことによって引きこもりの問題は解決の糸口が見えないまま長期化していくと言えるでしょう。

このように、社会が複雑かつ多様化しているため、深刻化する引きこもりの問題には、日本社会の構造が深く関係していると言えるでしょう。

中高年の引きこもりも増えている

深刻化する引きこもりの問題に、中高年の引きこもりが急増していることをご存知ですか?

これは、職場での人間関係の悪化、あるいは職場の雰囲気に馴染めない、さらにやりたくない仕事だったからという理由が考えられます。

例えば、職場で大人の「いじめ」に遭っていたら?それが最終的に人間関係の悪化につながり、職場から立ち退かざるを得ない状況となってしまうこともあるでしょう。

あるいは希望していた職種に就職することができなかったなど、社会でうまく生活できないために中高年で引きこもりの生活をするようになる方が増えているのです。

このように、深刻化する引きこもりの問題には、中高年の引きこもりが増えているという現実を受け止め、真剣に解決に向け取り組むことが大切だと言えるでしょう。

うつ病が原因で引きこもりになるパターンも

深刻化する引きこもりの問題のひとつに、うつ病が原因で引きこもりになるパターンがあります。

これは、人との関わり以外にも何らかの原因によって社会との接触を断ち、人とコミュニケーションを取ることさえできなくなってしまったからです。

例えば、うつ病を発症した場合、家族との会話も苦痛に感じることがあるでしょう。

また、人と接することを嫌うため、自分から外出しようとすることはありません。

さらに食事も不規則で栄養バランスのとれた食事を摂取することができていないなど、身体的にも精神的にも様々な症状が現れるでしょう。

このように、深刻化する引きこもりの問題には、うつ病が原因となっている可能性があることを理解しておくことが大切です。

 

引きこもりの人が家をゴミ屋敷にしてしまったら

では、引きこもりの人が家をゴミ屋敷にしてしまったら、どうしたら良いのでしょうか?

解決策について考えてみましょう。

家族みんなで協力して片付ける

引きこもりの人が家をゴミ屋敷にしてしまったら、家族みんなで協力して片付けを行いましょう。

これは、引きこもりの人は家族や社会と壁を作ってしまい、誰かに協力してもらうという習慣がないため、自分ではどうして良いか分からず、頼る場所を探していることが考えられるからです。

例えば、好きで引きこもりになったわけではない場合は、自分の思いとは裏腹な生活に疑問を抱いているかもしれません。

また、引きこもりを引き起こしている原因がうつ病などの精神病を患っている可能性があるため、自分ではゴミ屋敷の片付けを行う際に正しい判断ができないこともあるでしょう。

このように、引きこもりの人が家をゴミ屋敷にしてしまったら、家族みんなで協力し、ゴミを片付けるようにしましょう。

ゴミ屋敷片付け業者に依頼する

引きこもりの人が家をゴミ屋敷にしてしまった場合、本人や家族だけで片付けができない場合は、ゴミ屋敷片付け業者に依頼することをおすすめします。

これは、ゴミ屋敷に溜まったゴミの量が、とても自分自身や家族だけでは片付けることが不可能だと判断できるからです。

例えば、ゴミの量がまだ床一面の分量であればコツコツと自力で片付けを行うことができますが、ゴミが天井にまで達している、あるいは引きこもりの人の精神疾患により、物を処分する際の正しい判断ができない可能性があります。

このように、引きこもりの人が家をゴミ屋敷にしてしまった場合は、ゴミの量によってはゴミ屋敷片付け業者への依頼を検討すると、よりスムーズな片付けを行うことができると言えるでしょう。

誰でも簡単に始められる片付けポイント

ゴミ屋敷の片付けポイントを5つ紹介します。

  • 予定を立てる
  • 必要な道具を準備する
  • 害虫駆除をする
  • 明らかにゴミだと思う物を捨てる
  • 不用品で使える物は売却する

それでは、見ていきましょう。

予定を立てる

ゴミ屋敷の片付けは、1日で終わらないこともあります。

なので、片付けの予定を簡単に立てるとよいです。

予定の立て方は、一部屋ずつ徐々に進めると良いでしょう。

また、ゴミの回収日も把握しておきましょう。

ゴミ回収のタイミングに合わせて片付けを進めると効率が良いです。

必要な道具を準備する

ゴミ屋敷の片付けの作業を開始前に、必要な道具を準備しておきましょう。

【用意する物】

ゴミ袋自治体の分別にあわせて燃えるゴミ・燃えないゴミなどのゴミ袋を用意しておきましょう。
軍手怪我防止、衛生面の為に準備するとよいです。
マスクゴミ屋敷は、埃が起きやすいので、用意するとよいです。
殺虫剤虫の駆除に使います。
ビニール紐・ガムテープ本や雑誌をまとめるのに便利です。
清掃用具ほうきや雑巾など、ゴミ出し後の掃除に使います。

また、ゴミ捨て場まで距離がある場合、軽トラックを用意すると良いでしょう。

害虫駆除をする

ゴミ屋敷には、ゴキブリやハエなどの虫が発生している可能性があります。

片付けに取り掛かる前に、虫を駆除しましょう。

理由は、虫がいると、気になってしまい中々作業が進まないからです。

殺虫剤には、ミストタイプとスプレータイプがあるかと思いますが、先にミストタイプで駆除すると、作業がスムーズです。

明らかにゴミだと思う物を捨てる

まずは、明らかにゴミだと思うものを捨てていきましょう。

捨てるか迷った場合、「捨てる物」「捨てない物」「保留」と3つの箱を用意し仕分けるとよいです。

ただ、このように仕分けると保留の物が多くなると思います。

そうなると、部屋は中々片付かないです。

「いつか使うかも」と思う物は、今後使わない可能性が高いので、“今”必要かに置き換えて判断しましょう。

今使わない物を捨てると、どんどん部屋は片付きます。

不用品で使える物は売却する

片づけていると、まだ使える不用品も出てくるかと思います。

そのまま、捨てるのはもったいないと思う場合は、リサイクルショップやフリマアプリなどで売ると良いでしょう。

ただし、フリマアプリの場合、買い手が見つかるまで持っておく必要があるので、なかなか片付かないデメリットもあります。

まとめ

今回はゴミ屋敷と引きこもりの関係についてご紹介しました。

ぜひ参考にしてみてくださいね。

最後までご覧いただきありがとうございました。