ゴミ屋敷の問題は今や深刻な社会問題となっています。
近所にゴミ屋敷がある人も、実家がゴミ屋敷の人も、ゴミ屋敷をどのように片付けたら良いのものか悩みますよね。
実は、いくつかの自治体にはゴミ屋敷の問題を解決するための条例があるのをご存知ですか?
今回はゴミ屋敷の条例について詳しく解説していきたいと思います。
あなたの住んでいる自治体のゴミ屋敷条例についても、ぜひ調べてみてください。
この記事の目次
ゴミ屋敷の条例の具体例
ここでは、実際に制定されているゴミ屋敷の条例についてご紹介します。
東京都中野区
東京都中野区にはゴミ屋敷の条例が定められています。
これは、ゴミ屋敷に住む本人のみならず、近隣住民の健全で安全な生活を守るために2017年6月に「中野区物品の蓄積等による不良な生活環境の解消に関する条例」が制定されました。
中野区が制定した条例は、役所が周辺住民などからの申し出を受けて、立ち入り調査を行うなどして現場の状態を確認し、不良な状態であれば改善するよう助言・指導や勧告を行います。
ごみ屋敷の住人がそれに従わない場合は、命令を行います。
住人が命令にも従わない時は、最終的に行政代執行(ぎょうせいだいしっこう)を行うという流れでゴミ屋敷の片付けを行います。
しかし、高齢化によって認知症患者や精神疾患を患うために孤独死するケースが後を絶ちません。
このように、東京都中野区では、ゴミ屋敷の条例が制定されていることを確認しておきましょう。
大阪府大阪市
大阪府大阪市では、複数存在している「ゴミ屋敷」に対し、地域の生活が損なわれる状況をなくし、近隣住民の健康と住みよい環境を確保するため、2013年12月に「大阪市住居における物品等の堆積による不良な状態の適正化に関する条例」が制定されました。
条例は、ゴミ屋敷に対して、必要な支援を行い、ゴミを撤去した後も、住人の健全な生活を守るべく支援を継続するという内容です。
行政からの助言、指導、勧告、命令を経て、最後は行政代執行がなされるなど、いきなりのゴミ屋敷のゴミの撤去を行う訳ではありません。
あくまでゴミ屋敷の住人に寄り添った条例となっています。
しかし、現在、ゴミ屋敷に住む住人は高齢化が懸念されており、人とのコミュニケーションを取らないことから、孤独死に至るケースも少なくありません。
このように、大阪府大阪市では、ゴミ屋敷に対して必要な条例が制定されています。
京都府京都市
京都府京都市では、「ゴミ屋敷」に対して立ち入り調査やゴミの処分、また、処分命令を下すことができる「ゴミ屋敷対策条例(不良な生活環境を解消するための支援・措置条例)」が2014年11月に施行されました。
これは、ゴミ屋敷の建物や敷地内、さらに行動にまでゴミが山積みになる、また、悪臭や害虫被害による近隣住民の安全な生活を守るためのゴミ屋敷条例です。
市が制定した条例は、各自治会など、職員による調査、指導、勧告、命令の順に行われ、立ち入り調査を行うことを拒否する時は、ゴミ屋敷に住む住人の氏名を公表するとともに、過料の徴収を行うことになりました。
さらに、最終的にはゴミ屋敷のゴミを強制的に撤去する行政代執行が実施されるなど、ゴミ屋敷に対する手段を強いたものです。
実際に京都府京都市では、2015年11月13日に日本で初めて行政代執行が実施されました。
これは、2009年頃からゴミを溜め始めたことで近隣住民からの相談によってゴミ屋敷が発覚、その後、市は年間124回も訪問、さらに59回もの面談を行いましたが、まったくゴミを片付けることなく、行政代執行に踏み切ったそうです。
このように、現実的にゴミ屋敷の問題は重要視されており、ゴミ屋敷に住む本人のみならず、近隣住民の穏やかな生活を守ることが大切であるということが分かります。
兵庫県神戸市
兵庫県神戸市では、「ゴミ屋敷」に対し、ゴミを堆積することで悪臭や害虫被害、また、火災の恐れがあるとして、ゴミ屋敷の住人に対し、片付け等助言、指導、勧告、命令を行う条例となる「神戸市住居等における廃棄物その他の物の堆積による地域の不良な生活環境の改善に関する条例」が、2016年に制定されました。
これは、近隣住民の安全な生活と、ゴミ屋敷住人の健康、生活向上をはかるために実施されました。
しかし、それらに対応しない場合は行政代執行、さらには氏名を公表するとともに過料を科すなどの対応を行うこととしました。
強制的な撤去から行うわけではなく、ゴミ屋敷の住人の思いに配慮した条例です。
実際、平成28年2月29日に西区玉津町に住む高齢女性宅の大量のゴミが報道され、これまで近隣住民からの相談により、公道に溢れたゴミの撤去を行うなどの対応を行いました。
しかし、ゴミ屋敷の住人の精神疾患及び高齢化により、治療が必要な場合も多く、ゴミ屋敷の片付けがスムーズに行えないこともあるようです。
このように、兵庫県神戸市では、ゴミ屋敷に対して必要な条例が制定されています。
神奈川県横須賀市
神奈川県横須賀市では、ゴミを溜め込んだ「ゴミ屋敷」の解消と再発防止を目的とした「横須賀市不良な生活環境の解消及び発生の防止を図るための条例」を2018年に制定しました。
これは、ゴミ屋敷の住人に対し、助言、指導、勧告、命令を行った後、それに従わない場合、強制代執行を行うという方法です。
ゴミ屋敷があることで、悪臭や害虫被害だけではなく、火災が発生する可能性もあります。
そのようなことを避け、近隣住民の良い生活環境を整えるために必要な条例です。
ゴミ屋敷になるのは、認知症などの精神疾患以外にも、体力や身体機能の低下、また、セルフネグレクトが原因でゴミ屋敷化してしまうと言えるでしょう。
このように、ゴミを片付けることができないという方に対して、関係機関また、地域の人々が力を合わせ、ゴミ屋敷の住人に寄り添い、必要な支援を行うことが大切です。
埼玉県八潮市
埼玉県八潮市では、2016年6月20日に近隣住民の生活を不安にさせる「ゴミ屋敷」への対処について、市がゴミを強制的に撤去することが可能となる「八潮市まちの景観と空家等の対策の推進に関する条例」を制定しました。
これは、ゴミ屋敷の住人の健康状態、さらに、近隣住民の安全な生活を守るために制定されました。
条例の対象となるゴミ屋敷は、ゴミを放置したために悪臭や害虫などが発生することで、「地域住民の生活に支障を来している状態」とし、これに該当する場合は、指導、勧告、命令の順を追って、ゴミ屋敷の住人に対し、強制代執行に至る前に、ゴミ屋敷の片付けを促します。
これに反した場合や、命令に従わない場合は、強制撤去を行うことになります。
しかし、ゴミ屋敷に住む住人の中には、精神疾患を患うこともあり、すべてが条例に該当するとは言い切れません。
このように、埼玉県八潮市には、ゴミ屋敷のゴミを処分することに対し、条例が制定されています。
ゴミ屋敷の条例に違反するとどうなるの?
では、ゴミ屋敷の条例に違反するとどうなってしまうのでしょうか?
ここでは、具体的な処罰についてご紹介します。
罰金の可能性も
荒川区は、平成21年に「荒川区良好な生活環境の確保に関する条例」を施行して、ゴミ屋敷の住民を厳しく取り締まるような法整備を行いました。簡単にその罰則内容をまとめると、以下のようなものです。
- 第13条:立入調査拒否・妨害・質問に対し嘘をつくなどの行為をした場合は10万円以下の罰金
- 第14条:近隣住民の苦情に対する対策を講じない場合は5万円以下の罰金
ゴミ屋敷条例が各地で制定される都道府県も増えています。
しかし、何らかの理由によってゴミ屋敷条例に違反する住人もいるでしょう。
これは、自身のゴミ屋敷の片付けを行うことができない精神疾患を患っていることが考えられます。
例えば、ADHDやADD、さらにうつ病や認知症など、様々な病気に罹患している可能性もあるでしょう。
しかし、ゴミ屋敷の条例が制定されている以上、行政からの助言や指導、勧告、命令に従わなかった場合は、罰金の可能性が高く、実際に厳罰化されているのが現状であると言えます。
そのため、そのような対処となる可能性もあることを知っておくことが大切です。
このように、ゴミ屋敷の条例が制定されている都道府県に住むゴミ屋敷の住人は、行政からの厳しい措置が強いられることになるでしょう。
強制撤去
2013年の足立区のごみ屋敷条例(正式名称は「足立区生活環境の保全に関する条例」)の制定を皮切りに、似たような条例が各自治体で制定され始めました。
これらの条例に基づいて自治体がゴミ屋敷居住者の代わりにゴミ処理を行うことが一般的に「強制執行、強制撤去」と呼ばれます。
正式な名称は「行政代執行」です。行政が居住者の代理でゴミを処理するという判断を下し、ゴミを撤去します。
ゴミ屋敷条例が制定されている地域は少しずつ増えています。
しかし、ゴミ屋敷条例に違反する住人が後を絶ちません。その結果、強制撤去を強いられることになります。
これは、数十回、数百回の助言に応じず、ゴミ屋敷のゴミを片付けなかったためだと考えられます。
例えば、強制撤去が行われる以前にゴミを片付けさえすれば、そのようなことは起こりません。
しかし、ゴミを片付けられない精神病を患っていることもあるでしょう。
その場合、何度、行政が助言、指導、勧告、命令を行っても、ゴミ屋敷の住人は一向にゴミを片付けることができないでしょう。
このように、複数回に及ぶ接見を行っても改善が見られない場合は、ゴミを強制撤去されることになるということを理解しておくようにしましょう。
行政による代行片付け執行が行われる場合も
足立区 ゴミ屋敷条例の概要
- 命令・公表・代執行の実施
(1)指導・勧告を行ったにもかかわらず、改善されない悪質なケースの場合、命令・公表をすることができます。
(2)正当な理由なく命令に従わなかった場合には、代執行を行なうことができます。出典:https://www.city.adachi.tokyo.jp/kankyo-hozen/241024.html
ゴミ屋敷条例に違反した場合は、行政による代行片付け執行が行われることもあります。
これは、行政から複数回に渡りゴミの処分や撤去による助言、指導、勧告、命令が行われてもそれに従わなかったためです。
例えば、何度も指導を受けたにも関わらず、ゴミ屋敷のゴミの片付けを行わず、放置することもあるでしょう。
あるいは精神疾患を患っているためにゴミを処分することができない、また、片付ける体力がない高齢者である可能性もあります。
このように、ゴミ屋敷条例に違反した場合は、行政による代行片付け執行が行われる可能性が高くなるということを、ゴミ屋敷の住人は理解しておきましょう。
なお、条例違反によって行政代執行が行われた場合は、すべてのゴミの処分費用について、住人本人が負担することになります。
条例でゴミ屋敷が撤去された事例
条例でゴミ屋敷が撤去された事例を3つ紹介します。
- ①京都市の事例
- ②蒲郡市(愛知県)の事例
- ③横須賀市の事例
それでは順に見ていきましょう!
①京都市の事例
木造2階建てのアパートの一室で、ご近所でも有名なゴミ屋敷です。
住人から役所へ苦情が入り、100回以上の訪問指導がなされましたが改善されませんでした。
やがて行政執行が行われ、職員5名の手で、部屋の片付け作業が行われました。
その量はゴミ袋150袋以上となり、重さは45リットルにも…。
ゴミ屋敷の住人は部屋の中にゴミを持ち込む癖があるため、その悪癖を解消しない限り、今後もゴミ屋敷に逆戻りする可能性が考えられます。
②蒲郡市(愛知県)の事例
合計100回の訪問勧告を行うも、ゴミ屋敷は一向に片付けられる気配がなく、ついに行政が住人の名前公表に踏み切りました。
しかし期限になっても改善されず、ゴミは強制撤去になります。
③横須賀市の事例
条例に従い、市の職員が100回以上の訪問を行い、ゴミ屋敷の改善を求めるもゴミは放置されたままでした。
氏名の公表と片付け期限の通達まで行ったものの進展はありません。
ついに強制撤去となり、ご近所迷惑になる外回りのみ片付けを敢行します。
ただし室内にはまだ大量のゴミが残っているでしょう。
室内にまで踏み込んで片付けをするにはさらなる法律が必要です。
違反になる前に行動しよう!!
年々、ゴミ屋敷への条例はきびしくなっています。
もし自分の部屋が人を呼べないくらいに汚いのなら、ゴミ屋敷にならない内に片付けをしてしまいましょう。
一度ゴミ屋敷になってしまうと、労力だけでなく費用もかかるので、早めに対策を講じることが大切です。
また万が一行政指導が入ったなら、素直に応じることをおすすめします。
自身で片付けが出来ない人は業者利用がオススメ!!
自身で片付けができない人は業者に依頼しましょう。
業者は片付けのエキスパート集団ですから、丁寧・迅速に部屋をきれいにしてくれます。
また業者によっては片付けのアドバイスを受け付けているところもあるので、可能であれば今後のアドバイスについても聞いておきましょう。
ゴミ屋敷にならないためには即行動が鉄則です。
ゴミの量が多くならないうちに業者に相談することをおすすめします。
ゴミ屋敷条例の問題点
ゴミ屋敷条例には問題点もあります。
ここでは、ゴミ屋敷条例の問題点についてみていきましょう。
条例があることがあまり知られていない
ゴミ屋敷条例が制定されたとは言え、条例があるということがあまり知られていないのが現状です。
これは、ゴミ屋敷の住人のみならず、近隣住民でさえ、各自治体や行政がゴミ屋敷の片付けの相談を受付していることさえ知られていないためです。
例えば、ゴミ屋敷に住む本人が、本当は片付けを行いたいけれど、自分ではどうして良いかわからないと感じているかもしれません。
あるいは、条例があることや、相談を持ち掛ける場所があることさえ知らないということもあるでしょう。
このように、ゴミ屋敷を片付ける条例があるにも関わらず、そのような条例が制定されていることを知らないために、活用の幅が狭まっているという現状を打開しなければならないと言えるでしょう。
条例の執行までの手続きが煩雑
ゴミ屋敷条例の問題点として挙げられていることは、条例の執行までの手続きが煩雑であることです。
これは、ゴミ屋敷のゴミを住人の許可なしに勝手に処分することができず、行政による助言、指導、勧告、命令を経て最終的に行政代執行を行うことになります。
そうでなければ条例の執行ができないためです。
例えば、すぐにゴミ屋敷を片付けて欲しいという近隣住民からの申し出があったとしても、条例が制定されているからと言って、すぐに執行されるわけではありません。
まずはゴミ屋敷に住む住人に助言することから始めなければなりません。
また、自治体によっては、ゴミ撤去費用を最大100万円まで負担してもらえるところと、負担してもらえないところがあります。
それによって、強制代執行がなされても、実際に撤去費用を捻出することができないなど、様々な問題が生じます。
このように、たとえ条例が制定されていても、条例の執行までの手続きに想像以上の時間が必要となることを知っておかなければなりません。
ゴミ屋敷の条例がある自治体はごく一部
ゴミ屋敷条例の問題点として挙げられることは、ゴミ屋敷の条例がある自治体はまだごく一部の都道府県でしか行われていないということです。
これは、まだゴミ屋敷が住人や近隣住民に対し与える健康被害や災害の可能性に対する認識が浅い上、強制代執行において捻出するゴミ撤去費用を各自治体が負担できるかなど、様々なことが懸念されているためです。
例えば、ゴミ屋敷の片付けを行おうと思っていても、自治体からの支援がないために、ゴミを片付ける費用を根出できないために片付けを諦めてしまうという住人もいるかもしれません。
このように、未だゴミ屋敷の条例がある自治体がごく一部であることから、全国のゴミ屋敷の片付けを完璧に行うことは困難であると言えるでしょう。
今後ゴミ屋敷に関する法律ができる可能性は?
確かなことは言えませんが、今後ゴミ屋敷に関する法律ができる可能性は十分にあります。
なぜなら、ゴミ屋敷の存在により実益を被っている人が存在するからです。
ただ一方で、あまりに法律を強くしてしまうとプライベートの侵害にもつながりかねません。
こうした問題は線引きがかなりむずかしいですが、大切なことは向き合いつづけることです。
各自治体の今後の動きには、しっかりと目を向けておくようにしましょう。
まとめ
今回はゴミ屋敷の条例についてご紹介しました。
ゴミ屋敷の住人であるか否かに関わらず、大切なことは条例の内容について把握しておくことです。
また新しい条例がうまれた際に、すぐわかるようにアンテナを張り巡らせておくことで、問題が起こったときにも冷静に対処できるでしょう。
本記事で取り上げたゴミ屋敷の条例に関する情報についても、ぜひ参考にしてみてくださいね。
最後までご覧いただきありがとうございました。