家中がゴミで溢れかえっている家を通称”ゴミ屋敷”といいますが、たまにテレビや雑誌でピックアップされていることがあります。
「何故あそこまで部屋が汚くなるんだ?」と疑問を持つ人もいるかもしれません。
実は、部屋がなかなか片付けられない人は、強迫性障害、ADHD/ADD、精神疾患、といった病気にかかっている可能性があるのです。
今回は、これらが一体どんな病気なのか、そして治療法はあるのか、といったことについて見ていきます。
この記事の目次
ゴミ屋敷にしてしまう人に考えられる病気は?
いつのまにか大量にゴミが部屋に溢れてしまう人は次のどれかの病気にかかっている可能性があります。
- 強迫性障害
- ADHD/ADD (注意欠陥障害・多動性障害)
- 精神疾患
- ためこみ症(ホーダー)
- 認知症
それぞれ見ていきましょう。
1.強迫性障害とは(別名:ホーディング障害、強迫性貯蔵症)
強迫性障害とは、日頃気にしていなかった”こだわり”や強い”不安”な感情から日常的に支障が出る病気です。
たとえば、
- 自分のラッキーナンバーにすごく敏感になってこだわってしまう
- 家の鍵を閉めたはずなのに、何度も確認しに戻ってしまう
- 汚れが取れているのに、何度も同じところを磨いてしまう
などなど、これらに心当たりがある場合は注意が必要です。
ゴミかゴミじゃないかの区別ができなくなる
今までゴミだと認知していたものが、ゴミかどうかわからなくなり、「もしかするとこれは捨ててはいけないモノかもしれない・・・」。
といった感覚に陥り、ゴミを少しずつ溜め込んでしまい、その結果ゴミ屋敷になってしまうケースがあります。
決して、溜め込んでしまう本人は自分の中では間違いではないと思って行っているので周囲の方はそれを察知して接しなければなりません。
不安障害の一つとも言われている
また、強迫性障害は不安障害の一つとも言われています。明らかにやりすぎな行為を行ってしまいます。
例えば、「感染の不安から、手をひたすら洗い続けたり、肌荒れするくらいアルコール消毒をしたり」。このような行為をしてしまいます。
WHO(世界保健機構)では、生活上の機能障害を引き起こす10大疾患の一つとして挙げられています。
日本ではまだ認知している人は少ないです。 何故なら、強迫性障害を人格だと勘違いしている人が多いからです。
「私はこのような性格なのだ」と気づかない人や、もしかしてと気づいている方も精神科に行く勇気がなくて、日常の不便を解決できずにいる人がいると考えられています。
強迫性障害は治る病気
では強迫性障害は治す事ができるのか?と疑問になりますが、治療すれば治すことができる病気といわれています。
発症には、性格、ストレス、環境、感染症など様々な要因が関係していると考えられています。
はっきりとした原因や、なぜ強迫性障害になるのかは分かりません。
しかし、なぜ症状が続くのか、なにが影響して症状を引き起こしているのか、解明が進んでいる所もあります。積極的に病気と向き合って治療に取り組めば治すことができる病気となっています。
2.ADHD/ADD(注意欠陥障害・多動性障害)
ADHDとは不注意・多動性・衝動性を特徴とする発達障害です。
ADHDの症状
多くは子供の頃に症状が出やすいといわれていますが、近年、大人のADHDが発症していると言われています。
症状は子供と同じなのですが、「多動性」という側面については成長と共に落ち着くと言われています。「多動性」というのは、年齢に合わない落ち着きのない行動の事です。
例えば、
- 長時間座っていることができない
- 座っていてももぞもぞしてじっとしていることができない
等です。
ADHDの場合はこのような症状が多いと言われています。
ADHDではなくADD(注意欠陥障害)の可能性も
ただし、ADHDは呼び名が「ADD(注意欠陥障害)」と変わることもあります、ADDでは基本的にはこのような症状は治まっていると考えられます。
これは大人になるにつれて、環境や社会にでて、周囲との人間関係や構築の上で学び、「このような時は静かにしているべきだ、大人しくしているべきだ」などと、知識を身に着けるからだと考えられます。
ADDの症状としては
- 長い間集中していられない
- うっかり忘れが多い
など、不注意や衝動性の症状が多いです。
またADHDと違ってADDは家庭や仕事場、交友関係など幅広い面で影響を及ぼします。
症状の例としては、
- 気分に波がある
- 物をよく失くす
- 整理整頓ができない
- すぐにかっとなる
等、ADHDにも共通している不注意・衝動性の特徴に基づいています。
このような症状が、時々ではなく、幼少時から、常に持続している場合にADHDになっている可能性があります。
ADHD/ADDには前向きな面もある
ただできないという症状だけでなく、前向きな面もあると言われています。
忘れっぽい所などは、逆に敵意や恨みをサラッと流せれたり、既成概念に捉われずに物事を考えられる所から出てる症状なのかもしれません。
ADHDよりADDの方が、症状のタイプがたくさんありますが、どのタイプもまず自分がどれに当たっていて、どう向き合っていくかで改善できる方向に行くのではないかと考えられます。
また、ADHD/ADDかどうかが気になる人は専門医の診断を受けて、発達障害について正しい知識を身に着けることから始めると良いと思います。
3.精神疾患
精神疾患とは、多くの種類がありますが、トラウマ、コンプレックス、ストレス、過労、睡眠不足などが重なり、心が病んでしまう状態のことを言います。
具体的には、統合失調症、精神分裂症、うつ病、摂食障害、心身症、老年期精神障害などがあります。
先ほど述べた、ADHD(注意欠陥障害)も精神疾患の一つと言われています。
整理をすることが苦手ということに加え、通常生活でパニック障害に陥ってしまい、障害が複合的に発生することによって、結果ゴミ屋敷化してしまうと考えられます。
4.ためこみ症(別名:ホーダー)
「ためこみ症」というのは、近年発見され、注目を集めている病気です。
ためこみ症にかかっている方には、物を捨てることに苦痛を感じる、という特徴があります。
そのため、必要のないものでも捨てることができずに抱え込んでしまい、ゴミ屋敷化してしまうのです。
ためこみ症を治すには、通院が効果的であるようなので、悩んでいる方は一度病院に行ってみるのも良いかもしれません。
5.認知症
認知症も、ゴミ屋敷になる原因の一つです。
物忘れがひどくなり、記憶力が著しく低下するので、物を管理することができません。
ゴミを捨てたのかどうかも定かではなくなってしまうため、部屋がどんどん散らかっていってしまいます。
そのため、ゴミ屋敷へと変化していってしまうのです。
もしゴミ屋敷に住んでいる方が高齢である場合、認知症の可能性が高いかもしれませんね。
病気でゴミ屋敷になりやすい人の特徴は?
家がゴミ屋敷化してしまう人に、様々な病気の可能性があることがわかりました。
それでは、ゴミ屋敷になりやすい人に何か特徴はあるのでしょうか?
精神的な負担がある
仕事や人間関係で、大きなストレスを抱えている場合、ゴミ屋敷化してしまう要因になってしまいます。
気持ちに余裕がないため、部屋を片付けるなど自分のために使う労力が残っていないのです。
そのため部屋のことは二の次になってしまい、外の生活を最優先することで、ゴミ屋敷化しやすくなってしまいます。
完璧主義者である
完璧主義である人も、ゴミ屋敷になりやすい人の特徴です。
完璧主義な人は、何でもかんでも完璧な状態ではないと満足できないので、それを部屋の片付けにも求めてしまいます。
そのため「完璧にできないのならやりたくない」という気持ちを生み、部屋の片付けを後回しにするようになるのです。
病気でゴミ屋敷になってしまった事例
病気でゴミ屋敷化してしまった事例には、どのようなものがあるのでしょうか?
気になる様々な事例を紹介します。
安心感を求めてゴミ屋敷に
おそらく「ためこみ症」を患っていた女性は、ゴミを捨てられないのではなく、物に囲まれていると安心できるので、部屋を片付けなかったそうです。
「いつか必要になるかも」という物を捨てるのはとても苦痛で、物が多ければ大きほど落ち着くことができました。
しかしそのことで、家がゴミ屋敷化してしまい、家族に迷惑をかけてしまうようになったので、病院に通い治療を受けています。
ゴミ屋敷によって認知症が発覚
ある高齢男性は、一人暮らしをしていましたが、徐々に家がゴミ屋敷化していったそうです。
娘さんが訪ねた際にゴミ屋敷が発覚し、家族の協力のもと片付けがはじまりましたが、片付ける際の家族の質問に、男性は要領を得ない回答を繰り返します。
「流石におかしい」と気づいた家族は、男性を病院に連れて行き、認知症が発覚しました。
病気なった場合の解決方法
基本的に治療方法として挙げられているのは2つあります。
- 薬物療法
- 認知行動療法
これらの療法は主に精神科、神経科、心療内科で診察・療法を受けることができます。
1.薬物療法
薬物療法は治療法の中で最も基本となる治療法です。
統合失調症や気分障害に関しては、薬物を用いずに治療を進めることはきわめて例外です。神経症圏の疾患でも薬物慮法が併用される事があります。
薬物慮法の効果
薬物慮法を受けることによって、精神療法や社会復帰へと繋がる可能性を持つことができます。
主に薬物療法では、うつ、妄想、不安、緊張、強迫などのさまざまな症状に対して効果があり、症状が安定してきた後の再発予防にも効果的です。
よく取り上げられるのは、抗精神病薬、抗うつ薬、気分安定薬も症状を改善する作用として導入されています。
どの薬も、気分をもちあげたり、興奮や緊張を和らげてくれる作用があったり、さまざまな精神疾患に用いられています。
2.認知行動療法
”出来事に対しての受け取り方”や”モノの考え方”を認知と言います。
この認知に働きをかけて、心のストレスを軽減していく治療法を”認知療法”または”認知行動療法”と言います。
自動思考について
何かが起こった時に瞬時に浮かぶ考え方やイメージのことを”自動思考”と言われており、”自動思考”が生まれる事によって気持ちに変化があり、行動を起こします。
ストレスやモノの捉え方を変える為には”自動思考”に気づき、そこに働きをかけることによって変わっていきます。
ある出来事が起こる→自動思考が浮かぶ→感情を持つ→行動を起こす
辛いことがあった時に浮かんだ考えや感情に注目し、前向きな考え方に変えます。
物事を柔軟に捉える
認知療法や認知行動療法は、出来事が起こった際に一度足を止め、その時に浮かんだ自動思考を現実的に、より柔軟な新しい考えや捉え方に変えていくことで、その都度感じる小さなストレスを和らげ、その思考を学んでいきます。
そして今まで以上に楽な気持ちで自分らしく生きていける可能性を身に付けて行く事ができます。
決して自分だけが悪いと思うのではなく、あなたが生きていく上で支えている”思考(考え方)”が原因でもあるのです。
“自分”を知る
あなた自身の”人格”を変えるのは難しい事ですが、”思考(考え方)”は変えていく事ができます。
自分らしく生きていくためには自分と向き合い、自分を知ることが必要です。
まずは、自分の考え方を柔らくし、前向きで自由な考えを身に付けることで、よりストレスの軽減に繋がりますし、物事の捉え方も変えていくことができます。
考え方・捉え方一つで気持ちは大きく影響していきます。
認知療法・認知行動療法は、このような療法であなたの力になってくれます。
病気が原因でゴミ屋敷になった場合の解決方法
- 医者に相談する
- どうしてもできない旨を打ち明ける
- 片付け業者への依頼
ゴミ屋敷化してしまうのは、病気の可能性があるので、医者に相談するのが確実です。
勇気のいることですが、根本から解決しないと、ゴミ屋敷による苦痛はこれからも続いていってしまいます。
もし医者に相談するのが難しい場合、信頼できる人に「どうしても片付けられない」ということを打ち明けてみましょう。
また、片付け業者に依頼するのも、一つの手です。
片付けのプロに相談することで、掃除のアドバイスをしてくれます。
病気が深刻化する前に行動しよう!!簡単にゴミ屋敷を片付ける手順
- 虫を駆除する
- 計画を立てる
- 捨てるものと取っておくものを分ける
- ゴミの処分をする
近年では害虫駆除の商品がたくさんあるので、近くのドラッグストアなどで購入することができます。
掃除の前日までには、害虫駆除の殺虫剤を撒いておくなど、準備をしておきましょう。
また一気に全部を片付けることは、相当な労力を使いますので、少しずつ片付けていくのがオススメ。
「今日はここまで」という目標を決めておくと、作業にメリハリもついて良いでしょう。
仕分け作業は、思い切って行うことが大切。
ゴミの処分が難しい場合は、業者に依頼するのも一つの手です。
まとめ
このように今問題としてメディアからも取り上げられているゴミ屋敷問題について、詳しく述べてきましたが、ゴミ屋敷を作ってしまう側だけでなく、そこに隠れている本質に目を向けることや、周りの力も必要なのです。
ただゴミを集めてしまっているのではなく、そこには抱える大きな病気や悩みが潜んでいるのです。
今でもゴミ屋敷を引き起こしてしまって改善できない人もたくさんいます。
精神疾患や、強迫障害に苦しんでいる人は国内だけでも400万人近くいます。
また、ゴミ屋敷によって引き起こす二次的な病気にも目を向けないといけません。
例えば、ダニなどから引き起こす喘息が今やゴキブリが原因で引き起こす原因が多くなっています。
生ゴミ等の腐敗なモノから発生するメタンガスによって、気管支炎や皮膚病を引き起こすような二次的な病気も増えています。
これらの問題も含めて解決へと進める為には、まずは、ゴミを溜めてしまうその人自身の心の状態が正常になることが大事だと思われます。
もし不安なのであればきちんと病院で診断を受けられるのが最適です。
そして、ゴミ屋敷の改善策として、家族や親戚、近所、地域のコミュニティによって、よりメンタルのサポートとして一番の近道ではないかと考えられます。